万病に効くという温泉旅館へ
六田孝介(ろくた・こうすけ)
小説 定価(本体800円+税) 2011年11月4日発売
<本書の概要>
本当にこんな旅館が存在するのだろうか。
バブル景気がはじけて以降、厳しくなった仕事に日々汲々としていた高木は、妻の強い申し出によって二泊三日の温泉旅行に出かける。頸椎と腰のヘルニアを患い挫骨神経痛の疑いもある満身創痍の妻が探してきたのは「万病に効くという温泉旅館」。
本当にそんな温泉旅館が存在するのか。半信半疑の高木。しかし現地を訪れた夫婦は、景観の素晴らしい場所に立つ旅館の行き届いた対応に驚くと同時に、二人の世話係になった若い男女の従業員に好感を抱く。若い男女は、実は夫婦。お客には夫婦で世話をする、それが、全国で唯一この旅館だけのユニークなシステムだった。温泉もアルカリ・酸性・単純の三種が自然湧出し、それに薬湯風呂も設けられている。高木は、密かに期待を抱くようになる。
しかし、今まで自分から決して言い出すことはなかった旅行の話を今回だけ妻が提案してきた真の理由はどこにあったのか。高木にひとつの苦しい想念が浮かぶ……。そして高木には、どうしても妻に伝えておかなければならない言葉があった。
電子書籍版書き下ろし作品!
〈目次〉
1 藁にもすがりたい患者
2 変化の予兆
3 予想外だった医師の診断
4 膨らむ旅館への期待
5 古墳巡りと骨の記憶
6 生活が苦しかった頃
7 苦しい想念
8 伝えなければならない言葉